ITパスポート用語集 シラバス5.0用語集

5 シラバス5.0用語集

1 SRI(Socially Responsible Investment)

  社会的責任投資と訳され、企業への投資を行う際に、従来から投資基準となっていた経済・財務的な分析に加えて、CSR(企業の社会的責任)への取組みを考慮する投資手法である。
  社会や環境面への配慮、倫理的に取り組む企業を投資家や株主の力によって後押しすることで、企業にCSR活動を求めていく。近年ではESG投資と同じ意味で使われることもある。

2 データ駆動型社会

   モノとインターネットが繋がるIoTの進展に伴い生まれた言葉で、IoT化などにより得られた莫大なデータを解析し、現代社会に役立てようとする試みである。2015年に経済産業省が発表した「中間取りまとめ ~CPSによるデータ駆動型社会の到来を見据えた変革~」で誕生した。
   例えばインターネットと繋がるエアコンを想定しよう。エアコンは夏ならクーラー、冬は暖房で活躍する。稼働時間に関しては個人差がある。これらの情報はデータとして集約され、解析できる。解析したデータをもとに、人間の操作がなくともAIは自動でエアコンを制御することが可能となる。車の自動運転技術なども同じようなことが言える。
   以前の社会では、IoT化やデータ処理技術に関して進歩が足りなかった。しかし、現在ではIoT家電の普及やパソコンの処理技術が向上したことにより、データ駆動型社会を目指す基盤が整ってきたと言える。似た言葉として、情報社会が挙げられる。情報社会は情報に価値を見出す社会である。一方でデータ駆動型社会は、情報に加工する前の元となるデータに価値を見出している点で異なる。

3 OODAループ(ウーダループ)

   OODA(ウーダ)は、①Observe(観察)、②Orient(状況判断・方向づけ)、③Decide(意思決定)、④Act(行動)の頭文字を取ったもので、決定と行動に関するフレームワークのひとつ。行動をすると、何らかの結果が返ってくるので、それを再び「観察」することによって次のループに入る。軍事行動における指揮官の意思決定の方法論として始まったが、政治、ビジネスなど広範な領域で適用できる。
   Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Act(改善)から成るPDCAサイクルと似ているが、現状の観察を出発点としているところ、また、計画を立てることよりもやってみることを強調している点が異なる。常に変化していく状況の中で、現状から最善の判断を行い、即座に行動を起こすことを何度も素早く繰り返すことで、優位な立場に立つことを目的としている。

4 第4次産業革命

   第4次産業(医療や情報通信、教育サービスなどの製造業)のコンピュータ化、自動化により飛躍的な生産性の向上や効率化が図られることである。IoTであらゆる「もの」がインターネットで繋がり、ビッグデータの活用やAIによる自動化により、製造業での革新が期待される。
   2011年、世界で初めてドイツが国家プロジェクトとしてIoTの普及を宣言したことで、世界的に第4次産業革命への注目が高まり、日本では総務省がIoTの普及を推進している。「インダストリー4.0」とも言われる。第4次産業革命の目標の一つとして、企業のスマートファクトリー化がある。最近では、第5次産業革命という言葉も登場しはじめている。

5 リテンション【Retention】

   リテンションとは、もともと維持や保持という意味があり、次の2つの場面で使用される。1つ目は人事労務である。人事労務においては、優秀な社員の離職を防ぐ流出防止策として使用される。具体的には以下の施策がある。
   ・報酬のアップ
   ・在宅勤務やフレックスタイム、休暇制度などワークライフバランスの実現
   ・風通しの良い企業風土作りとして、プロジェクトメンバーの社内公募や希望職種への異動などのキャリアプラン形成の支援
  もう1つはマーケティングである。マーケティングにおいては、既存顧客を保持を意味する流出防止策として使用される。具体的には以下の施策がある。
   ・DMやメルマガなどによる継続的なクーポンやキャンペーン等の情報提供
   ・アフターサービスの充実化
   どちらの場面もリテンションを効果的に実施することで、企業の永続的な発展を見込むことができる。リテンションのメリットは、新規顧客の開拓や新規社員の採用に比べて低コストで実施できる点と施策が浸透することにより、他の顧客や他の社員への相乗効果が期待できる点にある。反対にデメリットは、具体的な施策を誤ると逆に顧客が他社に乗り換えたり、社員が離職したりなど離反される可能性が高い点である。人事労務においては、金銭的な施策よりも非金銭的な施策の方が効果的とされる。

6 SDGs【Sustainable Development Goals】

   持続可能で多様性と包摂性のある社会の実現のため、2030年を年限とする17の国際目標のこと。前身となるMDGs(ミレニアム開発目標)の後継として2015年9月の国連サミットで採択された。持続可能な世界を実現するための17のゴール・169のターゲットから構成され、「地球上の誰一人として取り残さない」ことをスローガンにしている。
   SDGsは世界全体で取り組むべき課題であり、目標17「パートナーシップにより目標を達成しよう」で示されているように、目標達成に向けて、政府、民間企業、市民団体、国際機関等が力を合わせることが要請されている。民間企業においてもSDGsへの関与を積極的に掲げたり、パートナー企業にもSDGsへの取り組みを求めたりする動きが広がっている。また消費者の間にも、環境保護に積極的に取り組む企業の商品を優先的に購入したり、SDGsに反する活動を行う企業を忌避したりする「エシカル(倫理的)消費」や「社会的責任投資」の機運が高まっている。

7 Society5.0

   サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を連携し、IoTですべてのモノや情報、人をつなぐとともに、AIやロボット、ビッグデータ等の技術で経済発展と社会課題の解決を両立する社会のことである。
   社会課題とは、少子高齢化、エネルギー問題、貧富の格差、食料問題、グローバル社会での競争激化などを指し、これまで人間が行っていた作業をAIやロボットに任せることで、質の高い快適な生活と、支配や監視ではない「人間が中心の社会」を目指す。
   Society5.0は「持続可能な開発目標」(SDGs)にも繋がる経済とされ、内閣府の「第5期科学技術基本計画」において、我が国が目指すべき未来社会の姿として提唱されている。

8 国家戦略特区法

   「世界で一番ビジネスをしやすい環境を作ること」を目的とし、地域や分野を限定して、規制や制度の大胆な緩和や税制面の優遇を行う規制改革制度を定めた法律である。2013年度に制定され、2014年5月に最初の区域が指定された。2021年6月現在、10区域が指定されている。
   地方公共団体または事業の実施主体となる民間事業者から提案され、一定の審査のうえ認定される。単独での提案だけではなく、複数の主体による共同での提案もできる。例えば、後継ぎ不在で荒れ放題の農地が多くあった兵庫県養父市では、今まで認められていなかった民間事業者による農地取得を認め、企業の持っている技術や資金を、耕作放棄地を農地に再生するために活かすことを可能にした。

9 分割表【Contingency Table】

   2つ以上の変数の間の関係を数的に示す表。変数には、男女、血液型、電話番号、氏名など、分類だけに意味があり、順序や大小には意味がない尺度が使われmそれぞれの尺度に該当する数が表にプロットされる。例えば、100人の男女に転職経験の有無を尋ねた結果を表にする場合、横軸に男、女の2列、縦軸に転職有、転職無の2行が置かれ、それぞれに合計列と合計行が続く。よくある2×2分割表である。行と列のカテゴリが、それぞれ2つの変数(男と女、転職有と転職無)によって分割されるので、分割表と呼ばれる。さまざまな調査・分析領域において、いくつかの検定法を使って、複数の変数間の関連性を明らかにしていく基礎となる。

10 母集団

   調査・観測の対象となる集合全体を表す統計学上の概念である。数に限りがあるものを有限母集団といい、限りのないものは無限母集団とされる。
   ある母集団を調査したいときは、集合全体を調べる必要があるため非常に手間がかかる。そこで母集団の一部をサンプルとして抜き出し、調査する手法として標本が存在する。標本から得られた情報を元に母集団を推測するというのが「標本調査」で、統計学では一般的である。ただし集計した結果には標本誤差が含まれる可能性がある。これに対して調査対象の集団を1つ残らず調査する方法を「全数調査」といい、国勢調査はこの方法である。こちらは誤差が含まれない。
   例えば日本人男性の平均的な入浴時間を知りたいとしよう。このとき該当者すべてに聞き込み調査をするのは現実的ではない。そこで日本人男性を数百人くらい無作為に選び、平均を割り出す。そして平均から母集団を推測するというのである。テレビの視聴率なども一部の選ばれた人達から割り出された数値であり、母集団が推測されている。

11 箱ひげ図【Box Plot】

   「箱」と「ひげ(線)」を使って最大値、最小値、四分位数(しぶんいすう)を示したグラフで、データの分布やばらつきを直感的かつ視覚的に表現できるため、統計分析などで多く使われる図である。
   「箱」はデータ全体の分布のうちの50%を表し、「ひげ」はそれ意外のデータの分布である。箱の中の線は、50%を指し、箱の中の▲や×などの記号は平均値を表す。ひげの下端が最小値、上端が最大値を表すため、同じような数字が多い場合は線と線が近くなる。
   箱ひげ図のメリットは大きく2つあり、1つ目はデータ全体のおおまかな分布を掴めることと、2つ目は平均値だけでは分からないデータのばらつきを視覚的に把握できることである。

12 CSV【Comma Separated Value

   「氏名, 住所, 生年月日」のように各項目値を「,(コンマ)」で区切って記述するデータ形式で、各行が各レコードに対応している。ファイル拡張子は「.csv」。
   テキスト形式の単純なデータ構造であるためデータ交換などに利用されている。データベースソフトや表計算ソフトなどのデータを二次元の表として表すアプリケーションでは、データの入出力としてCSVファイル(拡張子 .csv)を指定することができる。
   項目値自体がコンマを含む場合は、区切り文字のコンマと区別するために項目値を引用符「"(ダブルクォート)」で囲んで対応することになっている。

13 標本抽出

   統計調査のために母集団から一部の調査対象者を選別すること。標本抽出したうえで調査すれば、標本調査になる。母集団は基本的に数が多すぎて調査に時間や費用がかかるため、標本抽出によって統計調査を行うのが一般的である。
   標本抽出をする場合、くじ引きのような形で対象者を選ぶ無作為抽出法が用いられる。作為的に選ぶ場合もあり、有意抽出法と呼ばれている。そのほか、無作為抽出法はいくつかの種類に細分化できる。
   母集団をグループ分けして各グループから対象を選ぶ「層化抽出方法」、母集団をクラスター(集落)に分けてクラスターを選び全数調査を行う「クラスター抽出法」、母集団のグループ分けを繰り返し最後に残ったグループから抽出する「多段抽出法」、母集団に番号を付与してランダムで選んだ番号から一定間隔で抽出する「系統抽出法」が、無作為抽出法として存在する。
   各標本抽出の方法には得手不得手があるため、調査内容に応じて選ぶ必要がある。

14 擬似相関

   異なる2つの要素に因果関係がないにもかかわらず、あるように見えてしまう現象を表す統計学上の言葉である。仮に、AとBという要素の間に因果関係が認められたとする。しかし、実際にはCという隠れた要素が存在しており、CA間とCB間に関係をもたらしている。このようなときに本来は因果関係がないのに疑似的にAB間で相関関係が見えてしまう現象が、疑似相関である。
   具体例を挙げると、例えば「アイスの売り上げが多い時期(A)にはプールで溺死事故が増える(B)」とする。アイスの売り上げが多い時期(A)という原因が、プールで溺死事故が増える(B)という結果をもたらすと考えられる。実際にはAとBはそれぞれ、「暑い季節(C)」という第三の要素の存在によって現れるのだ。「アイスの売り上げが多い時期(A)とプールで溺死事故が増える(B)」は見かけ上の相関関係を持つが実際にはなく、「暑い季節(C)とアイスの売り上げが多い時期(A)」「暑い季節(C)とプールで溺死事故が増える(B)」が相関関係にあるのである。他にも「本をたくさん読む子は勉強ができるようになる」という因果関係も、実際には本をたくさん読むような家庭環境という隠れた要素によって生まれる疑似相関であるといった感じです。

15 ヒートマップ【Heatmap】

   データに色の濃淡をつけて、データの意味、重み付けの強弱を視覚的に見分けられるようにしたもので、収集したデータを可視化して問題解決を図る手法として多くの分野で用いられている。
   天気予報でよく見る、日本全国の気温または雨量を色の濃淡で表した図もヒートマップの一つと言える。他にも、効率的なタクシー配車のために、需要が見込まれるエリアと需要の高さを色の濃淡で地図上にリアルタイムに表示する、スポーツの試合で特定の選手が動いたエリアとその頻度で色分けして示す、といった用途である。最近のIT分野では、Webサイト内のユーザーの動きを示すアクセス解析ツールとして注目度が高まっている。ページ内でよく見られている部分は暖色、そうではない部分は寒色で示すことで、どの部分が注目されているかを一目で把握できる。また、ユーザーがサイト内でマウスを動かした軌道データに色の濃淡をつけて、ユーザー行動を直観的に理解できるようにすることにも使われている。

16 クロス集計表とは、2つ以上の質問を掛け合わせて集計したデータを表にしたものである。

   アンケート調査の回答を質問ごとにまとめたものを単純集計というのに対して、回答に対して別の回答を掛け合わせたものがクロス集計といわれる。例えば「元気ですか?」という質問に「はい」「いいえ」「どちらでもない」の回答を用意すれば、元気な人の割合が3分割でわかる。これが単純集計である。単純集計と合わせて今後は「男性」「女性」の回答欄を用意したとしよう。すると性別の比率がわかる。掛け合わせれば、男性と女性それぞれの元気な人の割合がわかる。これがクロス集計であり、表にすればクロス集計表となる。
  クロス集計のうち、表の上側は「表頭」、表の左側は「表側」と呼ばれる。表頭には質問が置かれ、表側には年齢や年代、地域などを置くのが一般的である。クロス集計を行うときは、最低でも30程度の回答サンプルが欲しい。そうでなければ比率などのデータの数値が小さすぎて情報を得にくいからである。

17 チャートジャンク【Chartjunk】

   グラフを用いて情報を伝える際、グラフ中の過剰なデザイン、3Dや、シャドー効果、太線のグリッド等のビジュアル要素を適切に用いない事により、本来伝えたい情報が正しく伝わりにくくなったり、情報が歪められて伝わったりする現象のことである。
   インフォグラフィックス研究の第一人者エドワード・タフティは、このように、過剰なビジュアル表現によって事実が歪曲される表現を強く非難するとともに、正しい図解の方法についての論争を巻き起こしている。この論争は「チャートジャンク論争」と呼ばれるまでに有名な論争になっている。タフティはグラフィックデザインの正しさを評価するための「データインク比」という指標も考案している。

18 A/Bテスト

   主にインターネットマーケティングで行われる、施策を判断のための手法のひとつ。クリック率(CTR)とコンバージョン率(CVR)の向上を目的に、1つのコンテンツに対して異なる2パターンのWebページ、広告バナー、広告文等を用意して、ランダムにユーザに閲覧・利用してもらい、それぞれの効果を比較、検証する。2つのパターン間で変えるのは1つの要素に限定する。A/Bテストを一定回数繰り返すことで、どちらのパターンが優れているのかを検証し、目的を達成するまでのプロセスの効率化を図ることができる。小さいコストで大きなリターンを得られることから、近年、よく使われるようになった。

19 サイトライセンス契約

   企業や学校など特定の施設(サイト)内に限定して、複数のコンピュータへの使用権を認めるライセンス形態。1本のソフトウェアで1つのコンピュータへの使用権が与えられる通常のライセンス契約と比較して、1ライセンスあたりの単価が低く抑えられるため、同一の施設に同じソフトウェアを大量導入するときに利用される。

20 CAL【Client Access License】

   ソフトウェア製品ではなく、サーバが提供するサービスにアクセスする権利をユーザに付与するライセンス。サーバの機能を同時に利用したいクライアントの数だけ購入し、設定する必要がある。
   何をもってクライアントとするかは、契約により異なる。多くの場合は、サーバに接続するデバイス数、または、ユーザ数である。媒体に格納されたソフトウェアを購入したり、ソフトウェアをダウンロードしたりして、パソコンなど使用するデバイスにインストールして使う形態から、ユーザがインターネットを通して、ITベンダーのサーバにアクセスして、ITベンダが提供する機能をサービスとして利用することが一般的になったことに伴って使われるようになった法的取り決めである。マイクロソフトの企業向けソフトウェアのライセンス体系として採用されてから、広く普及するようになった。

21 オプトイン【Opt In】

  直訳すると"参加することを決める"という意味で、事前承諾した者のみにメールマガジンの配信等を行う仕組みのこと。特定電子メール法により、広告・宣伝メールはオプトインした人にしか送ってはいけないことになっている。また、個人情報保護法では個人情報を第三者に提供する際には、本人から事前の同意を得るオプトイン方式が原則となっています。

22 オプトアウト【Opt Out】

   本人が反対の意思を示さない限り、メールの配信や情報の提供に同意したとみなす方式。個人情報保護法では、個人データの第三者提供に関してあらかじめ通知または公表しておくオプトアウト方式も認めているが、2017年改正により、個人情報をオプトアウト方式で第三者に提供する際には個人情報保護委員会への届け出が必要となった。

23 一般データ保護規則

  EUで適用されている個人情報保護に関する法規則である。1995年に施行されたEUデータ保護指令に代わるものとして、2018年に施行された。一般データ保護規則は法規制であり、違反すれば行政罰が科される。
   本規則において保護される個人情報は、氏名やメールアドレス、画像・音声のほかIPアドレスなどが挙げられる。特定の個人が識別できる情報であれば、消費者だけでなく企業の従業員なども保護の対象となる。一般データ保護規則の適用範囲はEU内だけに限られない。EUの外の地域あってもEUに居住地のある者の個人情報を扱うのであれば、適用範囲に含まれる。したがって日本企業であっても、世界中の顧客データを取り扱っているならば適用されることになる。違反すれば前年売上高の4%または約25億円のいずれか高いほうの制裁金が発生するため、無視できない存在となっている。

24 消去権【Right To Be Forgotten】

   プライバシー保護の為の権利の概念のことで、インターネット上に残る個人情報の削除を要求できる権利である。「忘れられる権利」とも呼ばれる。
   インターネットを利用する際、自身で管理することができる情報もあるが、自分では削除ができない情報も多くある。インターネットを利用するとインターネット上に個人情報が長年残ることから、一定の期間を経ても情報が消えない場合にはプライバシー保護上、削除する権利があるべきという考え方に基づいている。
   EUでは「一般データ保護規則」が施行され「忘れられる権利」が確立したため、EU在住者は検索エンジン運営企業に個人情報を含むリンクの削除を要求できる。ただし、欧州法ではEU域外にこの権利を適用する義務はないとされている。

25 独占禁止法

   談合による価格競争の制限や、不当に市場を独占する行為などを規制することで、公正で自由な競争を促し、企業が自由に事業活動できるようにするための法律である。正式名称は「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」で、略称は独禁法。市場が正しく機能していれば、事業者は創意工夫により売上を伸ばしていき、消費者は求める商品を選ぶことができる。事業者はそれぞれ競争しあうことになる。一方で独占禁止法に違反する行為が行われた場合、市場は不安定化し競争関係が崩れる。
   独占禁止法では、6つの規制が存在する。他事業者を排除する「私的独占の禁止」、他事業者と共同して競争を制限する「不当な取引制限」、団体などを規制する「事業者団体の規制」、会社の合併など「企業結合の規制」、特定の分野で5割以上のシェアを持つ場合の「独占的状態の規制」、競争の基盤を揺るがすような行為を禁止する「不公正な取引方法の禁止」である。
   独占禁止法に違反した場合は、内容によって排除措置命令や課徴金、無過失損害賠償責任、役員に対する罰則などが科されることになる。

26 フェイクニュース【Fake News】

  主に、ウェブサイトやソーシャルメディアにおいて発信・拡散される、真実とは異なる偽の情報やニュースのことである。虚偽報道とも言う。
   内容を目にした人に、いかにも真実であるかのように思い込ませ人々の注目を集めさせる。さらに、その情報を真実であると信じた人がSNSなどに拡散することで多くの人に短時間で広がる傾向があり、その影響力の大きさが社会問題となっている。単に面白いからといたずらを狙ったもの、ウェブサイトのアクセス数の増加を狙ったもの、政治的な目的での世論の操作など、悪用される場面は多岐に渡る。最近では、本物と見分けがつかないような偽物の動画「ディープフェイク」も問題となっている。

27 ファクトチェック【Fact Check】

   世間に広がる情報の正確性や妥当性、真偽を第三者が調査・検証し、その結果を人々と共有することである。単なる情報の事実確認ではなく「真偽検証」で、検証の内容は偽情報がどうかだけではない。正確、一部不正確、ミスリード、誤り、根拠不明など、社会に影響を与える真偽が不明の情報や言説がチェック対象となる。
   国際的に確立された原則として、IFCN(International Fact-Checking Network)が掲げる「Code of Principles」(ファクトチェック綱領)があり、最も重要な考え方として「非党派性・公正性」「情報源の透明性」「財源・組織の透明性」「方法論の透明性」「明確で誠実な訂正」がある。

28 ネチケット【Netiquette】

  ネットワークとエチケットを組み合わせた造語で、快適にインターネットを利用するために利用者同士が守るべき基本的マナーやエチケットのこと。古くからある言葉だが、近年はインターネット上で多くの人が交流するようになったので、再び重要性が増してきている。
   以下はネチケットの一例である。
   相手に不愉快な思いをさせる文章を書かない
   半角カナや丸付き文字は環境により文字化けするので使用しない
   質問のマルチポストはしない
   質問に答えたくれた人にはお礼を書く
   自分で調べてから質問をする

29 チェーンメール【Chain Mail】

   メールの本文に別の人に転送して欲しい旨が書かれたスパムメールの一種。いつどこで誰が作ったのかがわからないまま、不特定多数の人々に拡散していく特長を持つ。チェーンメールに書かれる内容は、恐怖心を煽るものや幸せになれるなど、受け取った者に対して転送を促す巧妙なものが多い。かつては携帯電話のメールで流れていることが多かったが、最近ではSNSに居場所を変えている。
   チェーンメールを受け取った場合は、決して転送してはならない。転送してしまったら自分自身がスパムの加害者になってしまうというのが理由の1つだ。速やかに削除したり内容によっては所定の機関に相談・通報したりするのが最善である。手助けや人探しを目的とした善意を煽るようなチェーンメールも存在するので、注意しなければならない。

30 ヘイトスピーチ【Hate Speech】

   人種、出身国、民族、宗教、性的指向、性別、容姿など、自分から主体的に変えることが難しいまたは不可能な個人の属性に基づいて、個人またはその所属する集団に対して攻撃、脅迫、侮辱する発言や言動である。
  「在日特権を許さない市民の会」が京都の朝鮮学校に「朝鮮半島に帰れ」などと街宣活動を繰り返した問題など、近年増えている。ヘイトスピーチは、人々に不安や嫌悪感を与えるだけでなく、人としての尊厳を傷つけたり、差別意識を生じさせたりすることになりかねず、許されることではないという考えから、こうした差別的言動の根絶に向けての取り組みが始まっている。その成果のひとつとして、いわゆる「ヘイトスピーチ解消法」が2016年に成立、施行された。

31 フォーラム標準

    複数の企業などが集まり、フォーラムと呼ばれる組織を結成し、その組織内での合意によって業界の実質的な標準をつくるものである。市場における企業間の競争において支配的になった製品の規格が業界の標準となるデファクトスタンダードと対比をなす。
     特に先端技術分野では、電気・電子分野におけるIEEE、動画・音声データの圧縮方式におけるMPEGなどの専門組織が設けられ、業界や業種の垣根を超えて関心を持った複数の企業が集まり、意見を交わしながら、技術標準が策定されてきた。研究開発から製造までコストダウンを図れるメリットがある一方、標準化された製品内での差別化が難しくなるデメリットもある。製品を買う側にとっては、価格が安くなる一方で、機能の選択肢が狭まることになる。 

32 ESG投資

   投資先を選択する際に考慮する要素として従来から使われてきた財務情報に加えて、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス)の3つの非財務情報も考慮した投資スタンスのこと。これらのスコアの高い企業は社会的意義や成長持続性に優れていると考えられるため、長期的な観点から投資価値を測る材料として注目を集めている。日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)もESG投資を行っている。SRI(社会的責任投資)やSDGsとも関連のある概念である。

32 VRIO分析

   企業の経営資源である人、モノ、カネ、情報、時間、知的財産などを、Value(経済的価値)、Rarity(希少性)、Imitability(模倣可能性)、Organization(組織)の4つの視点で評価し、強みと弱みの質や競争優位性を評価・分析するフレームワークである。V・R・I・Oの4つの視点に自社の経営資源が当てはまるかどうかをYES/NOで分析し、全てYESの経営資源は持続的であり、競争優位性があると評価する。NOである経営資源については、どうすれば強みに変えられるかを経営戦略に活用する。
   経営学者ジェイ・B・バーニーが提唱し、1991年に誕生したフレームワークである。


33 ペルソナ法

   サービスや商品の開発を行う際、具体的なユーザ像を設定することでユーザ視点に立った上で、サービス開発を行うモデリング手法である。
   ペルソナは、そのユーザが実在しているかのように、具体的な年齢や性別、生活スタイル、年収、家族構成、趣味、職業、行動パターン、対象となるサービスや商品に対して感じている事など、リアルで詳細な情報を設定する。具体的なユーザ像を設定することで、関係者同士で共通認識を持つことができ、ユーザ中心のUXデザインや商品設計の検討・協議がしやすくなる。元来はソフトウェアの開発手法であったが、現在では製品開発やマーケティングの分野などで広く活用されている。

34 バックキャスティング

   未来のある時点に目標を設定し、そこを起点に現在を振り返り、目標実現のために現在すべきことを考える方法(未来のあるべき姿から現在を逆算する)。長期的な目標実現や、現在の延長線上にはない未来を実現させるために有効な思考法である。
   革新的なアイディアが生まれやすいが、現実の解決方法に落とし込む際の不確実性が高く、実現が困難になりやすい。対になる言葉であるフォーキャスティングは、現状を前提に部分的な変更を加えて未来に迫ろうとする思考法であり、ウェザーフォーキャスト(天気予報)などの用法で広く使われている。日常用語としては普及していないバックキャスティングであるが、古くからあった思考法である。最近では、2015年9月の国連サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標)を実現させるために必要な思考法として注目を浴びた。

35 魔の川

  企業や大学の研究所において基礎研究から応用研究の間にある、乗り越えなければならない難関や障壁のことで、デビルバレーとも呼ばれる。基礎研究の成果で得た、新しい技術やアイデアを製品化や事業化する方向性が見出だせず応用研究に進めない状況になることである。
   技術経営の分野では、基礎研究から最終的に産業として発展させるまでの産業化までには複数の障壁があるとされ、魔の川のあとには、デスバレー(死の谷)、ダーウィンの海があり、研究開発のフェーズによって使い分けられる。「デスバレー」は、応用研究から事業化・製品化までの障壁を指し、「ダーウィンの海」は、事業化・製品化から産業化までに存在する障壁を指す。

36 ベンチャーキャピタル【Venture Capital】

   大きな成長の見込みがある未上場のスタートアップ企業やベンチャ企業に対し、出資を行う投資会社(ファンド)のことである。
   スタートアップ企業側は資金調達を行うことができ、投資家は、未上場時に株式を取得、その後企業が株式公開(上場)を行った際に株式を売却することで利益を得ることができる。スタートアップへの投資はハイリスク・ハイリターンとなるため、資金投入だけでなく、取締役会への参加や経営コンサルティングの提供、ハンズオン(経営支援)など、各種のサポートや支援を行うことでスタートアップへの成長を促し、企業価値を高めながらリスクの低減を図る。中には上場できず、出資金が回収できないケースもある。

37 特化型AI

   AI(人工知能)のうち、特定の決まった作業を遂行するタイプのもので、自動運転技術、画像認識、将棋・チェス、会計の自動仕訳など、現時点で実用化されているAIは特化型AIである。限定された範囲の中で、与えられた課題に特化して自動的に学習と処理を行う。特化型AIではすでに人間の能力を上回るものが登場している。例えば、アルファ碁は囲碁の世界チャンピオンを打ち負かすまでに発展している。しかし、アルファ碁は囲碁の分野に限られ、それ以外の能力は持っていない。

38 汎用AI

   AI(人工知能)のうち、特定の作業やタスクに限定せず、それ一つのシステムで人間のように様々な用途や分野の問題処理能力を持つものをいう。現時点では登場していないが、もし現実に誕生すれば将来的に人間の能力を超えるという見方もある。人工知能が人間の能力を超える時点のことは「シンギュラリティ」と呼ばれる。

39 人間中心のAI社会原則

   人工知能を利用する際に守るべき7個の原則(人間中心の原則、教育・リテラシーの原則、プライバシーの原則、セキュリティ確保の原則、公正競争確保の原則、公平性、説明責任及び透明性の原則、イノベーションの原則)を表す言葉である。
   現在世界の社会問題を解決する手段として、AIが注目されている。AIは人間の情報処理能力を上回るため、確かに便利である。その一方で、強力であるがゆえ使い方を間違えれば不利益をもたらし得る存在と言える。そこでAIの利用に関する原則として、本則が生まれた。人間中心のAI社会原則には、3個の基本理念が存在する。あくまでもAIではなく人間が中心となった社会を目指すこと、多様性と幸福追求、持続可能な社会を目指して活用することなどである。そして基本理念を元に、上記7個の社会原則が置かれている。

40 データのバイアス

   AIのためのデータを集める際、間違った認識や、差別、偏見など、偏りのあるデータを収集してしまうことである。
   データ収集の際、集めやすいデータが優先されてしまいやすいことが発生原因のひとつでもある。偏りのあるデータをAIに学習させてしまうことで、公平性のない結果を出してしまうことをアルゴリズムバイアスと呼び、典型的なケースとして、チャットAIなどでユーザが悪意を持った質問を入力することにより、AIが偏った学習をしてしまう状態を指す。AIに学習させる際、与える教師データが結果を導くための全てになるため、データの質は非常に重要である。データバイアスの問題は今後成長が期待される研究分野でもある。

41 トロッコ問題

  暴走するトロッコが2つの線路に分岐しようとしている。片方の線路には1人が横たわり、もう片方には複数がいる。どちらかが犠牲になることを前提に、あなたがどちらの分岐を選べばよいかというのが倫理的な思考実験の一種である。
   トロッコ問題は1976年から存在しているが、最近では自動運転車で話題になっている。自動運転車がトロッコ問題のような状態に陥った場合に、人工知能の判断が生死を決するからだ。「遺族が自動運転車の判断に納得できるのか」「殺人罪など法的な問題はどうなのか」「事故の責任を負うのがメーカーか運転者か」など、様々な問題を持つ。なお、本来のトロッコ問題では法的問題は問わず、倫理的にどうかという点を考える。

42 マイナポータル

   日本政府が運営するオンラインサービスで、マイナンバーを活用して子育てや介護をはじめとする行政手続がワンストップでできたり、行政機関からのお知らせを確認できたりする。
   マイナポータルのサービスは主に8種類あり、オンライン申請のための「ぴったりサービス」、税金や世帯情報を確認できる「あなたの情報」、行政からのお知らせが見られる「お知らせ」、行政とのやり取りを確認する「やりとり履歴」、外部サイトとつながる「もっとつながる」、「就労証明書作成コーナー」、「法人設立ワンストップサービス」などである。マイナポータルの利用には、一部のサービスを除いてマイナンバーカードが必要となっている。ICカードリーダーや読み取り機能を持つスマートフォンを使うことで、利用が可能になる

43 フリーミアム【Freemium】

   フリー(無料)とプレミアム(割増料金)を合わせた造語で、基本的なサービス・製品は無料で提供し、さらに高度な機能や特別な機能については料金を課金する仕組み。サービス・製品に触れる敷居を下げて、新規の顧客が入ってくる間口を広げるようとするものである。
   無料部分が魅力的で、利用や導入がしやすいことと、有料部分と無料部分の境目が明確で、有料部分の優位性がはっきりしている場合に成功しやすい。古くからあるマーケティング手法の一つであるが、近年、Webサービス、ソフトウェア、コンテンツの販売でよく使われるようになっている。その背景には、提供するためのコストのうち固定費の比率が高い、すなわち、ユーザ・顧客が何人増えようがコストはあまり変わらないコスト構造がある。さらに、ユーザ・顧客に課金しなくとも、広告収入が得られることもある。

44 EFT【Electronic FundTransfer】

   紙幣や硬貨、手形、小切手などの受け渡しによらずに、コンピューターネットワークを通じて取引の決済や送金やなどに伴う資金移動を行うこと。銀行振込が代表例である。
   日本ではビジネスにおいても個人生活においても必要不可欠なサービスとなっている。資金を送る側と受け取る側の資金のやり取りは合算され、主要な民間金融機関の口座間の資金振替として、全銀システムや日銀ネットによって処理されている。最近では、電子商取引の増加やキャッシュレス支払いの普及に伴い多様化する資金決済ニーズに対応するため、銀行を介さない電子資金移動も模索されるようになっている。それに応えるのがフィンテックである。規制緩和も進みつつあり、資金移動に係わる業者間の競争が今後激しくなるのは確実である。

45 キャッシュレス決済

   商品・サービスの対価の支払いに現金を使わない決済方法を指す。クレジットカードのほか、スマートフォンのキャリア決済や交通系ICカード、バーコードやQRコードを使った決済などが存在する。
   経済産業省は2018年4月、2025年までにキャッシュレス決済の普及率を40%まで引き上げるというビジョンを策定した。海外からの旅行客の需要に対応するための戦略である。キャッシュレス決済の利用者に対してポイントを還元するサービスを政府が提供していたのも記憶に新しい。
   なお一般社団法人キャッシュレス推進協議会の調査によれば、日本におけるキャッシュレス決済の利用率は2018年時点で24.1%だという。2020年に経済産業省が発表したデータでは、26.8%になっていた。世界的に見て最もキャッシュレス決済が普及しているのは韓国で、日本は主要国のなかで断トツに低いのが現状である。

46 クラウドソーシング【Crowdsourcing】

   群衆を意味するクラウド(Crowd)とソーシング(Sourcing)を合わせた造語。仕事を依頼したい企業と受注したい個人等をマッチングさせる場となるウェブサービスの名称として用いられている。
   クラウドソーシングを利用した場合、発注から受注、仕事完了までをすべてウェブで完結できる。発注者は仕事ができる人をかんたんに見つけられ、受注者は仕事が手に入るためお互いにメリットがある。クラウドソーシングには条件交渉から進めていくプロジェクト形式、公募のなかから最も気に入ったものを選ぶコンペ形式、アンケートなどかんたんな募集に使われるタスク形式などの種類が存在する。主にプロジェクト形式が使われ、デザイン系の仕事にはコンペ形式が使われることがある。クラウドソーシングの大手サービスとしては、クラウドワークスやランサーズが挙げられる。ほかにはライティングやウェブ製作、コンサルティングなど、特定の分野に特化したサービスを提供している場所も存在している。

47 eKYC【electronic Know Your Customer】

   いわゆる「本人確認」をオンライン上で完結する仕組みのこと。犯罪収益移転防止法の改正後、銀行口座開設やクレジットカードの申込み時にオンライン完結の本人確認が可能となった。
   銀行口座開設時の本人確認手続きなど金融業界で一般的に使われてきた言葉としてKYCがあり、これは「Know Your Customer(顧客を知る)」の略である。「electronic」が付くことにより「電子的な本人確認」を意味する。現在では、口座開設での利用に留まらず、フリマアプリ、電子マネー決済アプリなど様々な分野での導入が進んでいる。

48 CASE【Connected,Autonomous,Shared & Services,Electric】

   Connected(コネクテッド)、Autonomous(自動運転)、Shared & Service(シェアリング&サービス)、Electric(電動化)の頭文字をとった造語で、2016年パリのモーターショーでメルセデス・ベンツ会長、ディエター・チェッチェ氏が中期戦略として発表した概念である。この考えは自動車業界全体に広がっている。
   最近では車を持たず、カーシェアリングやライドシェアリングなど、車の新しい利用方法が浸透しつつあり、さらに自動運転、電気自動車の技術も大きく進歩している。これらの利用方法や技術革新を踏まえ、多様なニーズに応えながら、車の新しい概念として自動車メーカーが取り組むものである。

49 MaaS【Mobility as a Service】

   バス、電車、タクシー、飛行機など、すべての交通手段による移動を一つのサービスに統合する概念であり、IoTを利用して、実際に効率良くかつ便利に使えるようにするシステムである。直訳すると「サービスとしての移動」。
   パソコンやスマホのアプリを使って、出発点から目的地までの最適経路と利用すべき交通機関、所要時間、料金などを簡単に知ることができるサービスはこれまでも存在したが、MaaSではこの検索機能に加えて、予約や支払いもまとめてできるようになる。さらにMaaSでは、タクシー、シェアサイクル、カーシェアなど、公共交通機関にとどまらない幅広い交通手段が対象となる。フィンランドで初めて実用化され、日本でも実証実験が始まっている。

50 マシンビジョン【Machine Vision

   産業用機械に搭載された「機械の目」によって対象物を認識し、決められた処理を行うシステムのこと。加工中の食品や機械の部品を画像として捉え、対象物を全自動で目視検査するといった使われ方がされている。
   マシンビジョンは、目にあたるカメラ、カメラ信号をソフトウェアが処理できるようデジタル変換するフレームグラバー、光源、合否判定を行うソフトウェアで構成されている。カメラを使って撮影したものをソフトウェアが受け取って合否判定を行う。結果が出力され、合格であればそのまま部品や食品は使われることになり、不合格なら除外されるというのが一連の流れである。良品・不良品判定をはじめ、番号などの読み取りや傷や色の調査、大きさの測定、ゴミの分別などさまざまな目的で使用される。人間の目視検査では細かい部分までわからずダメな部分を見逃す可能性があるのに対し、マシンビジョンなら高精度でミスのない判別が可能となる。

51 ライフログ

   人間の生活や活動などをディジタルデータとして記録する技術、またはその記録されたデータ自体を指す。
   紙などへの記録は文字の誕生以来存在してきたが、ITが普及し、記録媒体の多様化、大容量化、低価格化が進むにつれて、ディジタルデータとしての記録が増えてきた。そして、コンピュータや関連機器の処理記録を指す用語である「ログ」が、「記録」に代わって使われた「ライフログ」という言葉が広く社会的に認知されるようになっている。例としては、ブログやSNSの書き込みであるが、利用者が自らの操作により記録するものだけでなく、インターネット上での検索履歴や、携帯電話のGPS機能などにより自動的に記録される行動履歴もある。近年、ライフログに付加価値を認め、その権利保護と法制化についての議論が盛んになっている。

52 情報銀行

   顧客の個人データを管理して他の事業者に提供する事業のことをいう。2018年にEUでデータ保護規則が施行されたのが始まりで生まれた。
   本来、個人データというのは個人が自分自身で考え利用するものである。しかし、一度企業に渡った個人データは個人の意思に関係なく他の事業者に渡ってしまう危険性がある。情報銀行では上記の問題をなくすため、個人データは自分で自由に扱えることはもちろん、事業者が一括して預かり本人に代わって運用できるようになるという。情報銀行の役割は主に5つあり、個人データの安全な管理、個人データが消費者のものであることを明確にすること、第三者提供時のデータの用途と明確化、消費者自身がデータを扱えるようにすること、データ活用で得られた利益を消費者に還元することである。

53 PDS【Personal Data Store】

   個人の情報をセキュアに構造化された方法で蓄積し管理するシステムやサービスのことである。総務省の定義では「他社保有データの集約を含め、個人が自らの意思で自らのデータを蓄積・管理するための仕組み(システム)であって、第三者への提供に係る制御機能(移管を含む)を有するもの。」としている。
   PDSで重要視されているものにライフログがあり、生活に関連するあらゆる情報を記録に残すことで様々な活用方法が期待されている。例えば、歩数や体温、食事などのヘルス情報を解析することで未病に役立てたり、病気との因果関係研究などの活用方法がある。蓄積した情報を第三者への販売可否を判断する「情報銀行」と合わせて機能するシステムである。