近未来予測2025を読んでのまとめ感想 第2章 未来の場所

この本から得るもの

 2025年までに起こる都市の変化

著者

ティム・ジョーンズ & キャメロン・デューイング

訳:江口 泰子

出版

2018/5/25

 

第2章 未来の場所

 2007年5月、都市人口が初めて世界人口の半数を超えた。2030年には世界全体で50億人が、2050年までには地球上の70%が都市で暮らすとみられている。

 都市にとって、集合住宅の開発と大量輸送システムの整備は最優先課題である。加えて、都市の大気汚染と水害の危険性である。

 いっぽうの農村部のも決して住みやすい場所ではない。交通輸送システム整備、医療の提供、教育機会の充実に加えて、基本的な公衆衛生は多くの農村部の課題である。

 本章では、都市部か農村部化を問わず、私たちはより良い暮らしを営むための課題と解決策について探っていこう。

 

住処を奪われる人々

 21世紀には、気候変動によって海岸に近い都市が深刻な洪水に見舞われる回数が増え、異常気象が異常でなくなり、耕作地が減り、安全な飲み水が手に入らなくなり、住む土地を追われる環境移民が増加する。経済格差の拡大を受け、条件のいい職を求めて多くの人が移動する。受入国や都市の人口が増加すると、その地域の資源に大きな負担がかかるため、今度はその国の政府が国民に海外移住を勧める。きちんとした統計がないために、現状を正確に把握しないまま、反動的な政策を打ち出してしまう危険性もある。前例のない大量移動に対応する持続可能な方法を見つける以外に、残された選択肢はないだろう。

 

インフラ不足

  農村部から都市部へ移り住んだ大量の人口は、さまざまな方法で都市に負担をかける。港、輸送システム、病院、幹線道路、上下水道、電話システムなどの重要なインフラは、国の繁栄や安全で安心できる生活の基盤である。

 マッキンゼー・グローバル研究所の試算によれば、現在のインフラ水準を2030年まで維持するためだけに、「世界は現在のインフラ投資額を1.6倍に増やす必要がある」という。重要な点を指摘すれば、その数字は維持管理費、リニューアル費、予備費-すなわち気候変動に合わせて必要となる費用-を含んでいない。

 先進国にとって懸念の的は、負の財産となったインフラ莫大な維持管理費や復旧費がかかるることだ。

  

 各国の政府には次の3つの選択肢がある。

 1 インフラ需要を減少させる。

 2 新たなインフラを整備する。

 3 効率的な運用と維持管理費によって、既存のインフラを最適化する。

 どの選択肢も考えられるが、最も大きな可能性があるのは第3の選択肢だ。ビッグデータとデジタルネットワークの活用すれば、現行のインフラをより有効活用するか、場合によっては完全に迂回することも可能だ。

 また、政策立案者は既存のインフラをより長く活用し、技術とインフラ利用の変化に適合するという選択肢に賭ける機会が増えそうだ。となると、ここで新たな問題が発生する。すなわち、誰がそのインフラ開発全体の責任を負うのか、誰を信用してその責任を一任するのか。

 政府が単体でインフラ開発を行うのではなく、民間部門の参加を望む傾向が強まる。都市が抱える大きな課題にともに取り組むためには、政府はますます民間部門と積極的に協力し合い、都市を支えるインフラをも向上させる必要があるだろう。

 

フレキシブルなインフラ

  インターネットに接続した、利用しやすい分散型のインフラを整備するためには、複雑で費用の書かかるリスクを孕んだ問題を解決しなければならない。既存インフラの性能を高めて、新たな用途にも対応できるオープンなシステムにしたうえで、維持管理も行うためには、それ相応の資源が必要になる。

 2025年にはインフラはさらにスマートになるばかりか、適応性も高まっているはずだ。電気を消費すると同時に生産する「プロシューマー」が誕生すると、エネルギーの流れは双方向になり分散型になる。

 ビルや通信システムもすでにインテリジェンス化している。消費する以上の電力を作り出す。自然に換気を行い、ソーラーパネルで発電して、6万リットルもの水を蓄える。

 インフラのフレキシビリティを高めるべき理由の一つは、効率性を追求する必要があるからだ。重要な資源が関係する場合にはなおさらである。インフラ供給者と規制当局の当面の目標は、より少ない資源でより多くのサービスと提供し、生産物を再利用し、無駄を極力減らして間違った供給を避けることだろう。

 ビッグデータにしろ。個別データや処理済みデータにしろ、データにアクセスして、うまく活用できるかどうかがカギ握る。

 インフラ供給者はサイバーセキュリティに熱心に取り組む必要があるとともに、システムをみなに開放する必要がある。

 2025年には次の4つが実現しているかもしれない。

 

1 特定の用途に応じた供給が可能になる

2 需要にもっと柔軟に対応できる

3 効率性が高まる

4 インフラ供給者がより長期的な視野に立てるというプラスの副産物が生まれる

 

利用しやすい交通輸送システム

 輸送システムは都市の風景を決め、経済を活性化させ、人々の欲望を満たす。

 アプリを活用したウーバーなどの配車サービスもそのひとつである。

 しかし、必要なのは根本的な変化だ。今日、温室効果ガスを引き起こす原因の約三分の一を輸送システムが占めている。この点で、改善が必要なのは言うまでもない。

 

自動運転車 

 完全自動運転への移行が実現すれば、幹線道路をトラックプラトゥーンが走行し、都市の中を小型の配達カーが行き交うようになる。コネクテッドカーはネットワークを築き、さまざまな技術を試行し、いずれ運転手なしに走行する画期的な体験を提供する

 

大気汚染

  インドでは毎年、大気汚染が原因とみられる病気で62万人が命を落とす。中国では、大気汚染が原因で亡くなる住民の数が1日4000人にものぼる。

  北京の大気汚染はあまりにも深刻なために、その空気を吸った時にはいに及ぼす影響は、1日40本のタバコを吸った時に匹敵する。

 2012年、大気汚染が原因で亡くなった人は世界中で700万人を数えた。

 ブルガリアラトビアスロベニアは、毎年交通事故でよりも大気汚染で亡くなる市民の方が多い。

 車への依存度を減らすのは最優先課題だろう。

 

水没する都市

 ほとんどの都市は洪水に対する備えがない。多くの地区や世帯はもはや洪水保険に加入できず、ますます危険にさらされている。

 21世紀中にあと3~4度の気温上昇は免れないだろうという懸念が広がっている。

 原子力エネルギーと太陽エネルギーを推進し、超効率の電池を開発しない限り、2~4度の平均気温上昇を防ぐことはまず無理だろう。

 想定外規模の洪水に備えることが最優先課題になりそうだ。

 2070年になる頃には、水害に遭う危険性のある総資産は今日の10倍の35兆ドルに上る見込みだ。気候変動が原因で内陸か北半球への移住を余儀なくされる人口は、世界中で最大10億人にのぼるという。

 

都市間の競争と協同

 都市と都市との間の競争は国境を越えて繰り広げられ、変化を促す。優秀な頭脳を引きつけるために都市は競い合う反面、過密、資源不足、大気汚染といった、繁栄の裏側にある問題を解決するために協力し合う。

 今後は都市国家ではなく都市間の活動や協力に焦点が絞られるようになると指摘するものもいる。18世紀に消えた都市国家という考え方が再び脚光を浴びようとしているのだ。

 だが、都市の影響力が中央政府の範囲を超えて拡大することには、マイナスの面もある。農村部に対する中央政府の関心が薄れてしまうのだ。都市生活者と地方生活者との間にますます溝ができ、それが社会問題もつながる。

 

フグリッド

 格差のせいか、自ら望んだのかはともかく、オフグリッド(接続しない)暮らしをしている人は、社会から分断されるか、もしくはプライバシーを保ち、健康的で心穏やかな日々を送ることができる。どちらの場合にしろ、イノベーションをはぐくむ土壌である。

 著者が出会った旅行者のほとんどは、旅を続けながら勤め先の企業でパートタイムとして働くか、フリーランスで働いていた。週に2日、無線LANにちゃんと接続できる環境にあれば、旅をつづけながら働いて給料も稼げる。

 さらに重要なことに、公共部門であれ、IT企業であれ、マーケティング企業であれ、彼らの雇用主はそのようなワークスタイルに何の不満も抱いていないのだ。今後フリーランスが増え、仕事そのものよりもプロジェクト単位で考える働き方が広まれば、特定の部門において「無線LANノマド」がますます増えるに違いない。とは言うものの、それが当てはまるのはごく一部の運のいい者たちだけで、世界人口の訳6割がいまだにインターネットに接続いていない。彼らはいろいろな理由でオフグリッドな生活をしている。

 インターネットに接続しない理由はいろいろだ。まず最も明らかな理由はアクセス格差である。アクセスを阻むおもな障害は「インフラの質」「通信料の高さ」「インターネットに接続する必要があるかどうか」の3つだろう。アクセス格差はインターネットだけでなく、教育や医療にも当てはまる。つまり、貧富の差によってインターネットや教育、医療を利用できるかできないかというアクセス格差が広まり、それがますます社会格差を拡大させる。

 国連の「持続可能な開発目標」は、目標10において「国内および国家間の格差是正」を真正面から謳っている。例えば、世界中で10億人もの人が電気のない暮らしをしている。--すなわち、多くの都市で100年以上も前から当然のように利用してきた電気を、いまだ世界の200万もの村が利用できていない。その10億人のほとんどは、単に電気がもたらす利益を享受できず、夜に電気をつけれないとか、食べ物を冷蔵保存できないということだけではない。薪やろうそく、灯油や石油を燃やして汚れた空気を吸い、健康にも悪影響を受けているのだ。

 デジタルオフグリッドの生活には、プラスとマイナスの面がある。プラスの面に目を向ければ、ストレスが減って穏やかな気持ちになれ。環境にも優しいうえ(皮肉にも、影響力のある人や周囲の人との)つながりが増え、節約にもなる。その一方で、よく言われるマイナスの面は格差の拡大だろう。デジタル世界へのアクセス格差は社会の分裂を生む。多くの調査が示すように情報格差デジタルデバイド)は経済的、社会的、民主主義的な格差を拡大させる。

 

結論 スマートシティ VS スマートシチズン

 スマートシティから、たくさんの可能性が生まれている。インドは最近150億ドル規模のプロジェクトに乗り出した。既存の中規模都市を近代化して100のスマートシティを開発し、大都市の衛星都市にするという計画だ。その目的は、既存の中規模都市の基本インフラを改善することにある。安全な飲料水と電力を供給し、廃棄物処理と公共交通機関の充実を図り、IT接続性を促進する。--それによって、都市が抱える難題を「スマート」に解決するのだ。

  たいていの人が考える理想的なスマートシティとは、再生可能エネルギーシステムと優れた輸送網、デジタルインフラとが一体となって、すべての住民に高効率の持続可能な住環境を提供する都市だろう。

 このように都市のスマート化を目指すプロジェクトは多いが、ここで大きな問題が浮かび上がる。すなわち、都市はそれ自体でどこまでインテリジェンスになれるのか。そして、スマートシティで暮らす住民はもっと情報に通じ、よりよい意思決定を行い、重要な戦略の開発と実行に参加できるのか、という問題である。積極的に協力して参加する、「スマートな市民」がいて初めて、都市を住みやすい生活空間に変えられるのではないだろうか。いま、求められているのは、再前線に立って住民とともに都市をデザインすることなのだ。

 「都市にはあらゆる人に何かを提供する能力がある。それが可能なのは、都市があらゆる人によって作られるからであり、またその時にこそ、その年の能力は発揮される。」今日にも当てはまる言葉ではないだろうか『アメリカ大都市の死と生』より。

 

 

感想

 2030年、50億人が都市に住む。

 都市機能もたないのではないかと感じてしまう。

 交通機能は十分な役割を果たせるのか。公共交通機関が、今はやりのコロナなどの感染症で、使えなくなったら都市機能マヒする。柔軟な働き方は大事。

 インフラ維持にも金かかる、開発にも金かかる。う~ん、どんだけ金使うのか。維持費に関して言えば、国の予算は極端に制限されている。新規開発はできない。4、5年に一度にある換装のタイミング逃したら契約会社に作業してもらえないみたいなことが起きる。自分たちでやらなくては。維持保守会社に頼りすぎ。しかし、そのような人材育成する金もないから、この現状か…。そんで、意外とちゃんとシステムを理解して利用していないという現実。ITリテラシー高めよう。

 「洪水」が今後のよく起こる災害となりそう。異常気象が異常で無くなる。気温上昇。エヴァンゲリオン的な四季が無くなり、常夏状態になってしまうのか。そうなると洪水はやばい。

 システムを活用し、スマートシチズンになって、スマートに問題を解決したい。

 まずは、事務作業をなくしたい。自分に貢献できるのはこれくらいか。

 病院に負担をかけないように「予防医療」も大事。