近未来予測2025を読んでのまとめ感想 第1章 未来の人

この本から得るもの

 高齢化、格差社会により起こる負担と、働き方の変化。

(第1章~第9章まであるので1章ごとに作成)

著者

ティム・ジョーンズ & キャメロン・デューイング

訳:江口 泰子

 

出版

2018/5/25

 

まえがき

六つのテーマ、「未来の人」「未来の場所」「未来の覇権」「未来の信念」「未来の行動」「未来の企業」をもとに、個々の課題ごとに現状や今後の2025年までの間に予測される変化、課題解決の方向性、イノベーション機会などについて紹介。

「グローバルな環境」「選択肢と可能性」「解決の方向性」「予測される影響」の4つの小見出しのもとに整理している。本書は著者が聞いた専門家の意見をどう思うのかまとめたものである。

やがて遺産(レガシー)となる製品やサービス、ビジネスモデルを未来の負荷にしないためのアイデアなど。

 

第1章 未来に対する12の共通認識

  1. 人口が爆発的に増加する
    現状地球上に70憶人 → 21世紀の終わりには+20億~40億。 (110憶人)

  2. 資源が枯渇する
    人口増加に伴い、消費量増加にどう対応するのか。

  3. 環境汚染に歯止めがきかなくなる
    窒素過剰、大気汚染、気候変動
  4. 移民は悪だ
  5. 仕事が不足する
    AIが低、中所得者の仕事を奪うのか
  6. 女性の教育水準の向上が、多くの問題を解決する
  7. 技術が大きな問題を解決する
    塩水で育つ作物、食料生産性向上、データ共有と通信技術のイノベーションによって、病人の治療を助け世界的な感染症リスクを減らす。
  8. 答えは太陽エネルギーにある
    無料の太陽エネルギーを利用して、無料の真水を作り出し、徐々に価格が下がるか無料の食料を供給する。
  9. 定年について考え直す必要がある
    今の社会では「死ぬ10年前」まで働きつづけなければならない
  10. 医療費は増加の一途をたどる
    糖尿病、ガン、アルツハイマー病などは増加傾向。予防医療はさらに重要な役割を果たせるか
  11. アジアの世紀が始まる

  12. GDP成長率は、社会の発達を評価する最良の尺度である

 

市民や企業、政府が未来に向けてより良い決断を下すためには12の共通認識のうち、どれを懸念して、どれをよしとするのかを区別できなくてはならない。

 

第2章 課題1 未来の人

 高齢化と格差社会は、財源を確保し社会のバランスを維持したい各国の政府にとって大きな懸念材料である。今後は「高齢化」「格差」という二つの問題が原因で、たくさんの変化が起きるに違いない。

 

不均衡な人口増加

 紛争や地球温暖化が原因でかなりの数の移民が発生する。
 人口増加を促すの要因はおもに「高齢化」「出生率」「移民」の3つである。

 このうち、ほとんどの社会で顕著なのが「高齢化」だろう。アフリカの平均寿命は50歳を超えた。

 若者が少ない中国は今後、深刻な危機を迎えるだろう。

 世界的に見て、移民の大半を占めるのは気象が原因の災害で住む場所を失った人たちだ。

 

縮小するミドルクラス

 IT企業やオートメーション企業の担当者に話を聞くと、彼らが焦点を絞っているのはもはや工場の未熟練労働や農業分野などではない。年収1万5千ドルの美容師を、手先の器用なロボットに代えることさえ、まったく現実に即さない。彼らが焦点を絞っているのは、優れたミドルクラスの仕事なのだ。欧米では年収5万ドルの仕事が消滅の危機にさらされている。

 見逃せない理由の1つは、オンデマンド経済いわゆる「ギグ・エコノミー」の急成長だろう。クラウドソーシングの仲介サイトが、弁護士やコンサルタント、デザイナー、原稿整理編集者、マーケターなどの人材とプロジェクトとを直接マッチングさせて中間業者を省いている。1億6000万人にのぼるアメリカの労働人口の約半数が、2030年にはフリーランスか独立業務委託になると見られ、紹介サービスや人材派遣会社などの中間業者にとって代わる莫大な規模の機会が生まれる。

 アメリカに限った話ではない。インドでは、労働者の25%がフリーランスだ。同じような傾向はフィリピン、ケニアインドネシア、ブラジルでも見られる。

 世界中の人材を供給できるうえに、サービス経済の発達もあって、これまで労働者の活動を制限していた場所や国境の問題はなくなる。これが国際市場の均一化を招き、人とプロジェクトとのますます効果的なマッチングを促し、長期的に世界のフリーランスの相場を時給40~50ドルに押し上げる、と予想する者もいる。

 あるいは、そう考えないものもいる。特定の分野において、中間業者の役割が今まで以上に重要性を増すという。たくさんの人が代理店を通さずに直接、保険に加入し、オンラインで新聞を契約するとはいえ、不動産業者は無くならないしむしろ繁盛する都市もある。ネットが勧める案件が多すぎて、かえって選べなくなってしまうため、信頼できる案内役や仲介者が必要になるからだ。

 

エイジレスな社会

 高齢者の増加という人口動態的な変化に社会が順応するにつれ、個人の実年齢は重要でなくなる。あらゆる年代の創作者や消費者に新たな機会が生まれるが、その恩恵を受けるのはたいてい富裕層に限られる。

 平均寿命は確かに延びたが全員の寿命が延びたわけではない。「収入」「健康」「平均寿命」には強い相関関係がある。

 

長く働く

 どこの国でも、女性の方が家事や育児に時間を取られ、生涯年収が低く平均寿命が長い。そのため、年配の女性はとりわけ老後の生活を支えるために仕事に戻る必要がある。

 企業はあらゆる年齢が働きやすい職場づくりを進め、経験豊富で判断力に優れたウィズダム・ワーカー(知恵と経験のある労働者)を採用する必要に迫られる。

 超高齢化社会を最初に迎える日本では、年配労働者にパートタイム雇用の選択肢を提案するとともに、若い技術者のメンターになるように勧めている。

 所得やスキルの低い未熟練労働者や肉体労働者は、これまであまり社会的・金銭的恩恵を受けられなかったうえに、最も年金を必要とする。必ずしも年金受給年齢を引き上げればいいわけではない。

 

増加する若者の失業率

 世界的に見れば、ワーキングプアの4人に1人が若者であり質の悪い仕事に就いて、将来の希望が持てないから状態から抜け出せない。

 国や地域によっては、その反対の事態も起こりうる。つまり、高い教育を受けたからといって、必ずしもきちんとした職に就けるとは限らない。

 経済に貢献できないという問題の他にも、若者の失業の蔓延は精神的な喜びや物質的な充足をその世代全体から奪い取ってしまう。

 若者が職にあぶれる理由は景気の低迷だけでなく、自動化の進展や求められるスキル不足にある。職を探す際には「場所」がものをいう。つまり、職のある場所へ移住できなければ職にはありつけない。

 世界の経済が停滞し、職場の自動化が進み、求職競争が激化するのに伴い、若者の失業率の上昇におおきな関心が集まるのも当然だろう。

 

手の届く医療

 世界人口のうち、まともな医療を受けられるのは30%にすぎない。適切な医療制度を維持するためにはそれだけの費用かかる。ほとんどの先進国において、医療費の対GDP比は9%以上。ところがアメリカでは17%を超えた。新興経済国でもGDPに占める医療費の割合は増大している。その理由の一つが、医療費の高額化だ。アメリカでは、連邦法によって製薬会社は薬価を自由に吊り上げることができる。

 人生最後の2年間に人が一生に費やす医療費の8割を使う。よりよい終末医療の提供が大きな問題になる。

 高齢者だけの責任にするわけにはいかない。座る時間の多いライフスタイル、飲酒、喫煙の習慣も糖尿病や心臓疾患、肺気腫、肝硬変などの慢性疾患を激増させる。そのどれも治療費が高くつく。治療に代わるアプローチとして予防医療に重点を置くことだ。特に個人の遺伝子型に対応したオーダーメイド医薬品は投薬の効果を劇的に高める。その反面、法外な医療費がかかる。富裕層を対象にしたオーダーメイド医療に大きなビジネスチャンスがある点を疑うものはいないだろう。

 医療の世界でよく問題になるのは、仕事の自動化とロボット工学が職を奪うのか、それとも増やすのかという議論である。高度な専門知識を備え、高収入で繰り返しの多い薬剤師のような仕事にAIやロボット工学が近い将来取ってかわられる可能性は高い。トラック運転手や会計士、さらにはパラリーガル(弁護士補助員)の仕事はITやAIに奪われるだろうが、人間の手を一切借りずに手術を行うロボット外科医が誕生するのは、まだまだずっと先のことと思われる。

 結局、医療費増大の原因を探っていくと、現在の製薬会社のビジネスモデルにいきつくのかもしれない。

 予防医療という考え方は、国民の生活水準を底上げするという意味で評価は高い。しかし、予防医療を推進する制度は整備されておらず、必要な財源を確保している国はほとんどない。治療費よりも予防に財源を回せるようになるためにはかなりの年月が必要だろう。啓蒙活動が欠かせない。

 医療費は国の負担と患者負担とのバランスで成り立つ。今後、患者の自己負担を増やすことが、ますます期待される。

 

地域居住

 エイジング・イン・プイレス(地域居住)すなわち可能な限り住み慣れた場所自宅や地域で家族とともに人生を全うしたいという高齢者の願いをかなえるためには、医療の分散化を推進する医療改革が必要だ。新しい介護モデルは「高齢者を中心に考える」「介護者に焦点を置く」「介護現場の連携を高める」の3つの要素を柱とする。

新しい医療モデルの測定基準は「生命を維持する」から「生活の質を高める」ことに変わった。

 

女性の選択ジレンマ

 男女平等を勝ち取る戦いは1世紀以上も前から大きな課題だった。国連の「ミレニアム開発目標」が努力を払ってきたにもかかわらず、学校に通えない子どもは男子よりも女子の方が多い 。経済的に豊かな国においても、男女平等とは言いがたい。男女の平均的な賃金格差が20%にものぼるからだ。

 それでもほぼ世界的な傾向として、学校では女子の方が成績が良く、大学に入った後もその傾向は続く。経済協力開発機構OECD)加盟国において、第三次教育(大学および職業専門教育)を受ける女子学生の比率は上昇している。女子大学生は男子大学生よりも卒業率が高く成績も優秀だ。この事実は2025年にはきっと男女格差の問題にも影響を与えていることだろう。

 男性と同等の教育を受けた女性は賃金の高い職に就きやすいが、それでも全体的に男性よりも年収が低く、男性年収の4分の3もとどまる。

 だが、男女の格差を財政面だけで判断したのでは全体像を見誤ってしまう。女性の稼ぎが男性よりも少ない理由が、女性が選択したキャリアパスとライフスタイルにある場合も多いからだ。働きはじめた時には、男性と給与がさほど変わらず、家族の面倒を見る責任を優先しなければならなず、年齢を重ねるにつれ、女性の所得がへってしまう。

 時短勤務がもっと一般的になれば、所得格差は縮まるかもしれない。だが、コアタイムの無いスーパーフレックス制はしばしば代償を伴う。なぜなら、従業員が特定の時間に働いたり長時間続けて働いたりする方が、企業にとっては労働時間の価値が高いからだ。企業側が新たな働き方を導入するか、残業したり特定の時間に働いたりする従業員に高い額の報酬を約束しなければ、男女の所得格差はかなり縮まるはずだと主張するものもいる。

 女性が本当の意味で職場で男性と対等にになるためには、家庭でも男性と女性とが対等になる必要がある、という考えに同意するものは多い。そしてそれは徐々に実現しつつある。野心的で高収入のスーパーヒーローこそ、成功した男性のあるべき姿だという従来のイメージを捨てて、子供の世話をして、妻の方が高収入である事実を受け入れる男性の姿を、高く評価すべきかもしれないのだ。

 

結論

  本章で述べた課題はそれぞれ別個のように見えても、実のところ関連している。今後ますます多くの人が格差社会で暮らすようになるだろう。多くの国で格差が拡大し、高齢化が進展する中で、どうやって公正な富を生み出して社会とのバランスを取り戻し、より優れた医療や支援制度を提供するだろうか。世界はもちろん、地域においても様々な格差があることを考えれば、そう簡単に解決できる問題ではない。

 ほとんどの人は、貧困に苦しむ者の少ない平等な社会を望む。とは言え、社会の上位に君臨する一部の者たちは、そう簡単に自分たちの影響力を手放そうとはしない。だが多くの人が考えるように、平等な社会を実現するためには、その構造を変えなければならない。あちこちの国で所得格差が増大したのはつい20年前のことだ。そしていま、高齢者が増加し、すべての人の健康な人生を望む声を背景に医療危機や介護危機が生まれた。急速に拡大するこの危機に取り組むつもりなら、変化を起こす必要がある。アメリカであれば当面のあいだは、GDPの20%を医療費に費やすことも可能かもしれない。だが、それ以外の国ではとても無理であろう。課税か慈善活動のどちらかによってにしろ、そして社会が両方望む時、富の再配分は明らかに重要な役割を担う。つまり私たちは、人口増加と移民による社会の混乱に対処するだけではなく、手ごろな料金で医療を提供し、高齢者や失業者を支援する財源を確保しなければならないのだ。そのお手本をどこで見つければいいのか。

 格差の少ない社会は、欧州北部の小さな国に多い。スカンジナビア諸国とオランダが実施する実効性の高い政策をほかの国でも適用できるかについて詳しく検討してみる価値はあるだろう。「スカンジナビア諸国と同じレベルで、富の再分配と社会福祉を実現する唯一の方法は、まずはこの議題を前進させるために力強い大衆運動を組織することだ」という人もいる。

 

 感想

 驚いたのはAIにとって代わる仕事が、「優れたミドルクラスの仕事」という点です。ロボットは人間よりもどんどん賢くなった。そしてその進歩はますます続く。そう考えると人間にしかできない仕事なんて存在しない。上手に使うか、使われるか...。人類史的な瀬戸際の状態が今にある。

 高齢化と格差が社会変化になるというところで、働き方は変わるだろう。生産性つまり成果主義がますます浸透して、いわゆる窓際族というものは過去の遺物になるはず。そんな人を採用することもない。現にいま大企業の45歳の早期リストラを行っている。プロジェクト単位で仕事をする、そこに国境はない。テクノロジーによってどこにいても意思疎通できるため、出勤する必要はほぼなくなる。そんな社会になるのか、2025年まで、あと5年。

 予防医療、評価は高いが財源なし。国単位でできなければ個人でやる。ここにもビジネスチャンスはあるかも。